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高崎簡易裁判所 昭和44年(ろ)12号 判決 1969年2月24日

被告人 箱田喜一

昭一七・一〇・一六生 自動車運転者

主文

本件公訴はこれを棄却する。

理由

一、本件公訴事実は次の通りである。

被告人は、法定の除外事由なく昭和四三年九月二九日午前九時五五分ごろ、安中市野殿二、一〇四番地附近道路において、自動車検査証に記載された最大積載量四、〇〇〇キログラムを約一、四〇〇キログラムを超えた約五、四〇〇キログラムの砕石を積載した貨物自動車を運転したものである。

二、当法廷における被告人の供述、被告人の司法警察員および検察官に対する各供述調書、司法警察員作成の重量違反車両の重量測定についてと題する捜査報告書、昭和四四年二月三日付行政処分歴(免許停止)の有無回答の電話用紙によれば、右公訴事実を認めることができ、この事実は道路交通法第五七条第一項、第一一九条第一項第三号の二、同法施行令第二二条第一項第二号に該当する同法違反事実であるところ、これは同法第一二五条第一項所定の反則行為に当る。ところで被告人に対しては、同条第二項第一号所定の無免許運転者、同第二号所定の過去一年以内の行政処分を受けたことがある者、あるいは同第三号所定の酒気をおびていた者のいづれかに該当するとの資料がない。もつとも前掲各証拠ならびに司法警察員作成の実況見分調書、医師の死亡診断書(死体検案書)によれば、被告人が本件公訴事実摘示の積載違反車両を運転中、公訴事実摘示の日時場所において井川茂運転の自動二輪車と衝突して同人が死亡した事実を認めることができるのであるが、前掲全証拠によるも、右衝突事故に対する被告人の業務上の過失の有無は別として、被告人の本件積載違反と右衝突事故との間には何等の因果関係もこれを認めることはできない。よつて被告人は、道路交通法第一二五条第二項第四号所定の反則行為をしよつて交通事故を起した者にも該当しないのである。

従つて本件公訴事実については、被告人に対して同条第一項所定の反則行為者として同法第一二六条、同第一二七条所定の告知通告の手続がなされたうえ、なお同法第一三〇条所定の条件を充足しなければ公訴の提起はできないものといわなければならない。しかるに被告人に対しては右公訴提起の要件を充たしたと認むべき資料がないのであるから、本件公訴の提起は、手続がその規定に違反したため無効であり本件公訴はこれを棄却すべきである。よつて刑事訴訟法第三三八条第四号により主文の通り判決する。

(裁判官 長谷川武)

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